斉田好男教授のアマチュア合唱団クリニック
日本語とアウフタクト
ヨーロッパ言語には「ザ・サン」「ラ・メール」といった定冠詞を伴う言葉が有りますが、日本語にはそれがありません。
アウフタクトはヨーロッパ言語の発音から生まれた強拍部の概念で、定冠詞や動詞の次に来る、たとえば
「サン」「メール」の頭の部分にアクセントがあります。
したがって、
「ザ」「ラ」の定冠詞が小節の最後の音符から歌われても違和感がありませんし言葉として通じます。
しかし、アウフタクトの日本語歌詞による
「蛍の光」♪ほ〜た〜るの〜ひ〜か〜り♪の歌詞で2小節目の頭にある「た」にアクセントを置くと日本語の流れとして正しくありません。
アウフタクトは曲作りに欠かせない技法ですが、日本語の歌詞を日本語に聞かせない歌唱法は良くありません。
同様に、アクセントがつくべきでない位置が高音に移行するときも、言語そのものが持つアクセントを尊重すべきでしょう。
高い音はどうしても強く歌われる傾向が有りますが、シラブルの持つ本来のアクセントに注意しましょう。
小節線は音楽の約束事ですが、歌詞のつく歌は言葉の意味のくくりによる動きをすべきで、小節によるシラブルの切断が無いよう気をつけましょう。

合唱のアーティキュレーション
アマチュアでも器楽を練習する人はアーティキュレーションを早く習得します。
しかし、器楽の経験がなく、合唱だけで音楽に触れている人たちはアーティキュレーションの習得が遅い傾向があります。
歌詞が音節や音のつながり、アクセントを表現していると思い込んでいるためです。
作曲者が指示しているスタッカートやスラー、アクセント、テヌートといった記号を声という楽器で歌詞に頼らず表現することは、訓練による習熟しかありません。
歌詞をつけずに歌ってみることも大切かもしれません。(vocalise[仏]ヴォカリーズ<母音だけで歌う歌唱方)
作曲者の意図を注意深く汲み取る歌唱が大切ですです。
伊東海彦・作詞/荻久保和明・作曲 混声合唱曲「季節へのまなざし」より
歌詞の子音の発声位置
下記楽譜のようにカノンで始まる楽曲は♪めぶき〜♪の歌詞が明快に各パートから聴こえてこないと形式が成立しません。
一段目のソプラノの♪めぶき〜♪の「め」は指揮者の一拍目の振り下ろしに有りますので「ME」と発音したいところですが「M」は前の小節の最後で発音しましょう。
音符の拍の中で子音を発音すると、母音が勝って、明快な「ME」にならず、♪えぶき〜♪と聴こえてしまいます。
「M」のような子音は意識せずに発音すると非常に短い発音時間なので特にどの合唱団でも注意されやすい箇所です。
同様に各パートも拍前で子音を発音しましょう。
同様な歌い方にベートーベンの第九の冒頭の歌詞で♪Freude!♪が有ります。
これも♪フロイデ♪の「フロ」の様な二重子音は先に発音して、音符の拍内では「オイデ」が発音されます。
そのことによりシラブルの速度が整えられて明快な歌詞として聴衆に届きます。
このような歌い方は多くありますが、音楽が体に入っていないと他人の歌い出しを聴いて歌いだすため実行が難しくなります。
歌詞と音楽を体に入れることと、指揮を良く見ることで、はじめてできる歌唱ですから練習が重要です。
伊東海彦・作詞/荻久保和明・作曲 混声合唱曲「季節へのまなざし」より
音符の長さと休符の長さ
クラッシックでなく、ポピュラー曲を合唱で取り組むことは近年多くなりました。
カラオケで歌う時はともかく、合唱で取り組むときには楽譜を忠実に再現することがセオリーであり、醍醐味です。
ジョンレノンの「イマジン」はメッセージ性も高く、歌われる機会が多い曲ですが、二小節目の四分休符、二分休符の合計3拍はあいまいに休まずきちんと休みましょう。
三小節目の八分休符の後の「It is」も歌いだしをあいまいに出ないよう気をつけることが重要です。得てして、八分休符を休まずに小節の頭からあいまいに「It is」と歌いだすことが有りますので、休符を実行して歌いましょう。歌いだしのフライングが何人も居れば合唱にはなりませんし、ポピュラーソング特有の歯切れの良さがが損なわれます。
ここで八分休符をきちんと休み、十六分音符に歌詞を載せることが”語りかける歌”に近づくと理解しましょう。
また、クラッシックと同様に、二重子音はその後に来る母音がオンザビートだということは上記で述べてありますが、再確認しましょう。

By John Lennon
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